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みほしブログ

趣味は生活と読書。

自己決定と羽生くん

全日本選手権が終わり、今年のフィギュアスケートの試合もひと段落。

若手の台頭や町田樹選手の電撃引退宣言などいろんなことがありましたが、なんといっても耳目を集めたのは、グランプリシリーズ中国杯の羽生結弦選手と中国の閻涵(エンカン)選手の激突事故でしょう。

 

本番直前の6分間練習での選手同士の接触はまあ、よくあるっちゃあることです。

でも、あんな風に「激突」しているのはフィギュアファン歴20年の私も見た覚えがありません。今思い出しても心臓がひやりとします。

 

流血し立ち上がれず、救護隊に肩を支えられてリンクを後にしたにもかかわらず、羽生選手は試合の出場を選択しました。そして5回転倒しつつもフリースケーティングを滑りきり、中国杯を総合2位で終え、グランプリファイナルへの出場へ望みをつなぎ、見事ファイナルでは優勝したことは記憶に新しいかと思います。

 

で、転倒して怪我をしたにもかかわらず試合へ出場したことについてですよ。

テレビ放送はこれを感動的に扱い、一部の著名人も感動したとコメントしています。


羽生魂の演技に尾木ママら感動の涙「リンクへの姿勢、凄まじい」 ― スポニチ Sponichi Annex 芸能

 

でも、Twitterやそのほかのコメントを見る限り、羽生選手を試合へ出したことについてコーチやスケート連盟に対して否定的な意見が主流だったようです。


羽生結弦の負傷を美化する風潮にテリー伊藤が苦言 - ライブドアニュース

 

幸い試合後の検査では脳に異常は認められず、むしろ足の怪我の方がひどかったわけですが。

 

もし、あなたが、激突した時点で羽生くんのコーチだったらどうします?

 

私は、コーチやスケート連盟が出場を強硬で止めるべきだったという意見が多くてちょっとびっくりしてます。

もちろん、今回の事故を教訓に脳震盪テストを設けるとかコーチやドクターによる出場ストップの権限を与えるとかの議論はあってもいいと思いますし、あって当然です。

でも、現時点でフィギュアスケートにおいてそういうルールはないんです。

 

その状況下で私なら、全力をもって出場をやめるよう羽生くんを説得する。

あなたには未来があるんだと。

死んではならないと。

でも、彼が出場すると決めたなら、仕方ないと受け入れる。

 

なぜならそれが彼の選択だから。

それで死んでも彼の人生だから。※

 

 

蒼い炎

蒼い炎

 

 

コーチやスケート連盟がストップすべきだったと(ストップのルールがない時点で)やいのやいの騒いでいる人は「羽生くんの自己決定を軽く見すぎじゃね?」という違和感を少し感じます。

 

自己決定とは、自己責任の裏返しでもあります。

 

どこまで自己決定を認めるか、自己責任を求めるかはすんごく難しい問題だと思います。

 

自己決定と対で語られる概念として、パターナリズムというものがあります。

 

パターナリズム:相手の利益のためには、相手の意思に反してでもその生活や行動に干渉すべきだとする考え方。上司と部下、医師と患者など、父と子のような保護と支配の関係に見られる。父親的温情主義。(明鏡国語辞典より)

 

 

どこまでパターナリズムを認めるか?

フィギュアスケートは特殊なスポーツです。選手がお金を払いコーチを雇います。

 

私は、コーチやスケート連盟が羽生くんを試合に出させたことは仕方のないことだと思います。

それと同時に、今回と同じようなことが起きないよう、フィギュアにおける医療体制の充実を切に望みます。批判されるべきは、選手の生命を守るルールを設けていなかったことであり、羽生選手を出場させたことではない、と考えます。

蒼い炎II-飛翔編-

蒼い炎II-飛翔編-

 

 

※この激突事故の時点で羽生くんは19歳でしたので、未成年ということを加味して親権者にパターナリズム的介入を認めるべきだったと考えることはできますが。今回はフィギュアの中で考えてみました。