みほしブログ

趣味は生活と読書。

コインチェックNEM盗難被害、日本円で返金補償について思うこと

NEMが日本円で補償される件、「よかったね」という声が多いけど顧客にとっては「ゼロになるよりは全然いいけど補償方法としては最低限」だと感じました。
最善はNEM財団やホワイトハッカーの協力を得て盗まれたNEM返還、次によいのはコインチェックからNEMで補償。

JPYでの返還はその次くらいでさらに言うと、履行不能となったコインチェックから盗まれたときの値段(チャートをみると103円前後)で返還するのが妥当なのに、NEM取引中止後〜返金のプレスリリースをだしたときまでの平均値である88.549円での返還。

単純に損する人も多いだろうし、強制的にJPYへ利確/損切りされることにより雑所得として最大55%の所得税+住民税が課されることに。年収は平均的だけどNEMで億もってるようなサラリーマンは税金が予想外のすごいことになるよね。翌年の所得税の予定納税もすごいことになる(これは減額申請可能だけど)。

これは予言ではなく予測だけど、今回の補償でNEMの価格をいつの時点で考えるかという争点の訴訟が顧客からコインチェックへ提起されることでしょう。そのなかで「取引所はそもそも顧客の仮想通貨を補償する義務を負うか」といった議論がなされ今後日本における仮想通貨についての重要な裁判例となると思います。

それにしても、NEMがゼロになるのではとの不安をあおる役員たちの会見からの、日本円での補償の流れ、お見事でした。フェイスインザドアテクニックだね!
あとNEMの補償が発表される直前にNEM大量買いした人がどなたなのかわかったら誰か教えてくださいね。

いちばん悪いのは盗難グループであり追跡もできているようですし、最も最悪なのはコインチェックが破綻することなのでそれは回避できる道筋が立ったことはコインチェック利用者として素直に喜んでおります。

ちなみにわたしが3日前に購入した本です。
まだ読んでません。

いまさら聞けない ビットコインとブロックチェーン

いまさら聞けない ビットコインとブロックチェーン

 

 

 

足止めする飛び石と反涙活――町屋良平『青が破れる』

わりと本を読むほうなので、文章を読むのはそこそこ得意だ。基本的にすらすら読む。

カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)

カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)

 

 どうしても苦手なのはロシア系の名前で、あいつらは日本人の音節感覚を超えた変形を重ねていく。
ニコライがコーリャになったり、
エフゲニーがジェーニャになったり、
しかもいくつも愛称をつけるのでロシアの小説はたどたどしく読む。

 

でも、日本が舞台で日本語で書かれた小説、しかも書き手が同世代の日本人の小説を最近たどたどしく読んだ。

あうなりとつぜん

とか、書いてあるのだ。そのひらがなのかたまりにぶつかったとき、なぜかわたしは「おーなり由子」の名前を思い出した。

あかちゃんがわらうから

あかちゃんがわらうから

 

 もう一度そのひらがなを読み直して、ああ、〈会うなり突然〉か、と理解する。

青が破れる

第53回文藝賞受賞作であり、第30回三島賞候補作でもある町屋良平『青が破れる』は基本的にはとても読みやすい小説なのに、ぽつりぽつりとひらがなのかたまりが出てくる。

むいていないきがしていた

おれのことをぜんぜんすきじゃないことをしってる

働きマン コミック 1-4巻セット (モーニングKC)

働きマン コミック 1-4巻セット (モーニングKC)

 

安野モヨコの『働きマン』というマンガで、マンガ編集者が庭師に取材する話が出てくる。いま手元にマンガがないのでうろ覚えだけど、作りこまれた日本庭園に敷かれた飛び石のなかに、歩きにくく配置された箇所が出てくる。
編集者が戸惑っていると、そこからの眺めを楽しんでほしいから、あえて足が止まるように飛び石を打っているんだと庭師の方が言う。

 

『青が破れる』のなかのひらがなのかたまりにぶつかるたび、わたしは戸惑った。すすす、となめらかに行を移動していた視線が止まり、もう一度、多いときは二度ほど読んで、ああ、とひらがなの意味を咀嚼する。

このひらがなのかたまりは、「足を止めさせる飛び石」なのだと思う。読む時間を強制的にゆっくりにさせることは、短い枚数で複数の死が出てくるこの小説のなかで、読み手を鎮静させるような効果がある。

「あいつ、ながくないらしいんよ」
とハルオはいった。

冒頭からこうだ。
主人公の秋吉がハルオの彼女の見舞いにいった帰りの場面から小説は始まる。ハルオの彼女、とう子さんは〈ナンビョー〉のたぐいで余命いくばくもないらしい。

ここで「女殺し難病もの小説アレルギー」持ちのわたしは一気に身構えるわけだけど、ぜんぜん違う。悲しいことを悲しいと書いて共感を揺さぶるだけの難病もの小説とは、ぜんぜん違った。

人が死んでいなくなること。死んだ人のまわりの人間関係が変化していくこと。人が死ぬのは悲しい。若い人が死ぬのはもっと悲しい。けれどその悲しい、という感情の外と後までさらりと描かれている。

わたしは読み終わっても泣かなかった。
かんたんに泣いてカタルシスを得てすっきり忘れられる小説を求める人にはおすすめしない。
かたまりにぶつかって考えたい人、考え続けたい人にぜひ読んでもらいたい一冊です。

 

青が破れる

青が破れる

 

 

 同じく第30回三島賞候補作の書評です。

www.mihoshiblog.com

 

 

#2016年の本ベスト約10冊 を選んでみた

昨年もやってみたこの企画。

www.mihoshiblog.com

今年も2016年に出版された本のなかで面白かったものをまとめました!
どーーーーーーーーーーーーーーん。

 

簡単に紹介しています!

 

・『ワイルドフラワーの見えない一年』 松田青子

ワイルドフラワーの見えない一年

ワイルドフラワーの見えない一年

 

短いものだとたった一行。とても短い色とりどりの小説が50個もぎゅぎゅっと詰まったジェリービーンズの瓶詰めみたいな短篇小説集。
「女が死ぬ」「少年という名のメカ」など松田青子さんの批評眼が光る話がとてもいい。気分転換したいとき、飴玉をなめるように1篇1篇読みました。

 

・『1945年のクリスマス』ベアテ・シロタ・ゴードン

1945年のクリスマス 日本国憲法に「男女平等」を書いた女性の自伝 (朝日文庫)

1945年のクリスマス 日本国憲法に「男女平等」を書いた女性の自伝 (朝日文庫)

 

  日本国憲法に男女平等・夫婦間の平等を書いたベアテ・シロタ・ゴードンさんの憲法制定時の記憶をたどる自伝。1995年に出版された本が今年朝日新聞出版から文庫化されました。

 

・『屋根裏の仏さま』ジュリー・オオツカ

屋根裏の仏さま (新潮クレスト・ブックス)

屋根裏の仏さま (新潮クレスト・ブックス)

 

 「写真花嫁」としてアメリカに渡った日本の娘たちが第二次世界大戦開戦により日系人収容所へ強制収容されるまでを「わたしたち」という主語を用いてパッチワークのように語る静かな小説。
2011年、フランスのフェミナ賞外国小説賞などを受賞。

 

・『すべての見えない光』アンソニー・ドーア

すべての見えない光 (新潮クレスト・ブックス)

すべての見えない光 (新潮クレスト・ブックス)

 

第二次世界大戦で激戦地となったフランス、サン・マロ。盲目のフランス人少女と孤児のドイツ人少年兵の物語を巧みな構成で描いたほんとうに素晴らしい小説。ピュリツァー賞受賞作。

上記3冊はフィクションか否かの違いはあるけれどすべて第二次世界大戦が背景となった個人の物語。映画『この世界の片隅に』も素晴らしかったですが、今年は戦争のなかの一般人を描いたもので秀作が多かった気がします。

 

・『冬の夜ひとりの旅人が』イタロ・カルヴィーノ

冬の夜ひとりの旅人が (白水Uブックス)

冬の夜ひとりの旅人が (白水Uブックス)

 

 

・『その姿の消し方』堀江敏幸

その姿の消し方

その姿の消し方

 

『冬の夜ひとりの旅人が』も 『その姿の消し方』も「読むということは何か」を深く考えさせられる小説。起承転結のくっきりした物語を好む人にはおすすめできないけれど、「なんでこんなに読書が好きなんだろ…」っていう人はぜひ読んでもらいたい2冊。さらに悩みが深くなること間違いなし。

 

・『悩みどころと逃げどころ』ちきりん・梅原大吾

悩みどころと逃げどころ (小学館新書 ち 3-1)

悩みどころと逃げどころ (小学館新書 ち 3-1)

 

 キャリアも考え方も全く異なる二人の人生談義。どちらの意見も思考を重ねてきた方の重みがあってとても面白いけれど、最終的には自分のアタマで考えなくてはならいことに気づかされます。
この本の出版を機にちきりんさんからインタビューを受け、「Chikirinの日記」で記事にしていただいた思い出深い1冊。

インタビューの経緯などはこちら

www.mihoshiblog.com

 

・『青が破れる』町屋良平

青が破れる

青が破れる

 

「あいつ、ながくないらしいんよ」
およそ小説らしくない台詞で始まる第53回文藝賞受賞作。この本については近々ブログで書評を書きます!同時収録されている短篇「脱皮ボーイ」がとてもすきな小説でした。わたしも男の子の皮むきたい。
 

 

・『アヴァンギャルドでいこう vol.6』

アヴァンギャルドでいこうvol.6

アヴァンギャルドでいこうvol.6

  • 作者: 山田宗太朗,九十現音,槇野慎平,福田ミチロウ,栗田篤人,寺尾友里,大前粟生,町屋良平,Vito Foccacio,Cherry Brown,たなかあずさ,九島優
  • 出版社/メーカー: 密林社
  • 発売日: 2016/11/06
  • メディア: ムック
  • この商品を含むブログを見る
 

 手前味噌ですみませんが、わたしが文芸評論に初チャレンジした『叔父/伯父さん小説論―「家族」のなかのアウトサイダー』という文章を載せてもらったインディーズ雑誌です。思ったより紙幅が足りなくて最後のほうが駆け足になってしまったのが心残りですが、インタビューやコラムもおもしろいものが充実していますのでサブカルチャーに興味がある方におすすめ。

 

・『センチメンタルな旅』荒木経惟

センチメンタルな旅

センチメンタルな旅

 

とても有名な写真集ですが発行部数が少なかったので幻となっていたものが完全復刻。発売前からチェックして即購入しましたが、もうAmazonでは売り切れのようです。なのでアラーキーファンは遭遇したら購入しておいたほうが後悔しないと思います…!

わたしが通っている豊崎由美さんの書評講座で「好きな本を紹介する」という自由課題のときに『センチメンタルな旅』を書評して書評王(最も得点を集めた書評)になることができたのも良い思い出です。

syohyouking.hatenablog.jp

 

…以上です!

ふーーー今年もぎりぎり間に合った!
今年はあまりビジネス書を読まなかったのでベスト約10冊にも1冊もビジネス書がランクインしませんでしたね。来年は新刊より昔読んだ文豪系の小説を読み返したいと思っています。

それでは皆さまよいお年を!

「性」から自由になれる日は来るのか――古谷田奈月『リリース』書評

恩師である弁護士の教授は、いわゆる鬼畜系AVの撮影によって被害を受けたAV女優の法的支援をしていた。彼女の授業で私は初めて鬼畜系AVというものを知った。水の張った透明なバスタブに何度も沈められ苦しさに顔をゆがめる女。列をなす何十人もの男にかわるがわるレイプされる女。性器や肛門に異物を無理やり挿入され大けがを負う女。AVの一画面を切り取った写真を見ただけだったけれど、まず吐き気が、次につよい感情が沸いた。

怒りだ。

私はバスタブに沈められていないし、レイプもされていない。それでも私の一部がバスタブに沈められ、レイプされたように感じた。私の「女」であるという部分が。彼女たちが被害にあった主な理由は、そこにいた「女」だったから。誰もが自身と不可分に付き合わなければいけない「性」しか、女たちが被害にあう理由がない。その理不尽さに苦い怒りがこみ上げた。

リリース

古谷田奈月『リリース』は男女同権が実現し、同性婚が主流となったオーセルという国が舞台だ。女性首相ミタ・ジョズは法律を通して男女の性役割の解放を行い、未婚者・同性婚者たちに不利な法律を改正した。さらに生殖関連事業を国営化し、オーセル・スパーム(精子)バンクを創設する。男性はドナーとなってスパームを提供することが善行とされ、スパーム提供を受けた女性は同時に代理母として登録される。生殖から性行為を抜き取り、未婚者・同性婚者たちにも平等に子どもを持つ機会が与えられるようにするために。

〈もっとも先進的な愛と平和〉を体現するオーセル・スパームバンクがテロリストに占拠されたところから物語は動き出す。テロリストはバンクに集まった人々の前で演説を始める。テロリストの名前はタキナミ・ボナ。名門大学の4年生で異性愛者だと語る彼は、スパーム提供を拒み続けていたのにもかかわらず、政府が女性を利用し自分のスパームを強制的に手に入れたと告発する。さらに自分のスパームはすでに10名の女性に着床済みだと告げてこう言う。

〈「今こそはっきり告発します。ミタ・ジョズはぼくをレイプした」〉
〈「彼女は多くの人を救ったかもしれない。でもぼくに言わせればミタ・ジョズは、かつてのマイノリティをマジョリティ化しただけだ」〉

どよめく群衆を前にボナは自分のスパームのIDを読み上げようとしたが、もう一人のテロリスト、オリオノ・エンダが突如現れ、ボナの頭を銃で撃ち抜き、演説は強制的に打ち切られる。

ボナの演説を聞いた群衆のひとり、17歳のユキサダ・ビイは怒りを言葉に変えたボナの〈言葉の力〉に圧倒され、占拠事件の情報収集に夢中になる。大学へ進学し新聞部に入部したビイは、理想とする無思想のニュースメディアのインターン記者として占拠事件の取材を試み、思いもよらない人物と出会う。そして怒りに燃えるテロリストが成し遂げた、衝撃的な復讐の真相を知ることになる――。

日本で今、ジェンダーやセクシュアリティの問題で法整備が進んでいない分野についてオーセルでは多くの手当がなされている。同性婚は合法だし、独身でも同性同士でも子供が持てる。性犯罪の量刑は重く、男女平等社会で女性が首相を務めている。

それなのに登場人物は自分と不可分の「性」に悩んでいる。怒りを持っている。『リリース』を読みながら呆然とした。私たちの社会がより良くなるはずの法整備がなされたとしても、その先に待つ社会がオーセルと同じものならば、ボナが、エンダが、ビイが、わたしが抱いた怒りはちっとも癒されることがない、という事実を突きつけられるから。

いったい私たちはどうしたらいいのだろう。霧は晴れないけれど、鬼畜系AVを見たとき、泣きながら激昂した男、吐くためにトイレへ行った男がいたこと、そしてマジョリティとマイノリティを反転させただけでは真の平等は実現しないという『リリース』の警鐘を私は忘れない。

リリース

リリース

 

  

ジュンのための6つの小曲

ジュンのための6つの小曲

 

 

星の民のクリスマス

星の民のクリスマス

 

 

 ★2017年5月14日追記
『リリース』が第30回三島賞候補に選ばれました!

www.shinchosha.co.jp

 

同じく第30回三島賞候補作の書評です。

www.mihoshiblog.com

 

「普通」とたたかうコンビニマン――村田沙耶香『コンビニ人間』書評

10人産んだら1人殺せる社会を舞台にした『殺人出産』。
人工授精技術が発達し生殖と家族が分離され、夫婦間のセックスが近親相姦となる社会を描いた『消滅世界』。

殺人出産 (講談社文庫)

殺人出産 (講談社文庫)

 

 

消滅世界

消滅世界

 

どちらもショッキングな内容で話題となった作品だが、読者は安心してその「社会」を堪能できる。なぜなら、村田沙耶香が考えた”If”を膨らませた小説のなかの「社会」は、あくまで「あちら側」の社会であって、読者がいる「こちら側」の社会は浸食されないからだ。

しかし、『コンビニ人間』は違う。思考実験のために作られた社会でなく、「こちら側」の社会を書いてやろうという村田の強い意思が感じられる。

コンビニ人間

主人公の古倉恵子は大学1年生のときにコンビニでアルバイトを始め、同じ店に18年間勤め続けている。幼いころから「普通」が理解できなかった恵子は、マニュアルを与えられ、コンビニで働き始めたときこう感じる。〈そのとき、私は、初めて、世界の部品になることができたのだった。私は、今、自分が生まれたと思った。〉

自分と同世代のアルバイト仲間が着ている服のタグを盗み見、ポーチのなかの化粧品のブランドをメモして〈普通の三十代女性〉になるべく恵子は努力するものの、アルバイトのまま正社員として就職せず、未婚で恋愛経験がない〈理由〉を周りはやっきになって見つけ出そうとする。〈迷惑だなあ、何でそんなに安心したいんだろう〉とぼやきつつ、恵子は「普通」の妹から困ったときはとりあえずこう言えと伝授されている「私は身体が弱いから!」を連呼する。

恵子の生活に変化が訪れるきっかけは、白羽という男がコンビニに雇われたことだ。白羽は世界が悪いと糾弾する一方、結婚して成功して世界に認められたいというアンビバレントな欲望を膿ませたろくに仕事もできない男で、案の定コンビニをクビになる。ここ二週間で14回、「何で結婚しないの?」と言われた恵子は白羽を家に住まわせることにした。すると、男が家にいる、というだけで周りの恵子を見る目は一変する。常に恵子を心配していた妹は興奮して祝福し、コンビニ店員仲間から初めて飲み会に誘われ、女友達からは「こちら側」へようこそ、と歓迎を受ける。
〈私はいろんなことがどうでもいいんです。特に自分の意思がないので、ムラの方針があるならそれに従うのも平気だというだけなので〉彼女のような人間は少数ながらもそれこそ縄文時代から存在しただろう。ここまで自意識が薄くなくとも、職に就いたことによって〈世界の正常な部品〉となり、居場所を得た人も多いはずだ。それを糾弾する社会は「正常」なのか。人間はみな世界にひとつだけの花として特別なオンリーワンでなければいけないのか。花じゃない生き方だっていいじゃないか。最後、恵子が選んだ道は「正常」を蹴飛ばしつつも明るく、こういう生き方もいいのではないか、と読者を思わせずにはいられない魅力がある。

「みんなちがって、みんないい」なんて金子みすゞが100年近くも前に詠んでいても、なかなか皆が「普通」欲しがるものを欲しがらない人間は理解されにくい。でも、コンビニ人間だってもちろん「いい」のだ。確かに恵子は変わった人間として描かれている。でも、決してかわいそうな人間としては書かれておらず、ユーモアを残した繊細な描写に「正常」からこぼれ落ちてしまった人間へのやさしさが垣間見える。
村田沙耶香はスーパーマンでもスパイダーマンでもない、「こちら側」の社会のいびつさと対峙するコンビニマンという新たなヒーローを作り上げたのだ。この小説の芥川賞受賞を心から嬉しく思う。

コンビニ人間

コンビニ人間

 

  

わたしと小鳥とすずと―金子みすゞ童謡集

わたしと小鳥とすずと―金子みすゞ童謡集